ライドシェア解禁
3月7日の未来投資会議にて安倍首相によって道路運送法の改正の方針が表明されました。内容としては、ライドシェア(自家用車を使った有料顧客輸送)の活用を拡大することとなっています。現状でもライドシェアは一部で認められているようですが、それをより広範囲に認めていくことを示唆しています。ライドシェアとして有名なサービスにUberやLyftがありますが、こういった配車サービスが日本で使いやすくなることを意味します。アメリカでは既にこうした配車サービスは広く使われていますが、日本ではあまり使われていません。それは法律による規制が原因にあったわけですが、改正が行われるとすぐに普及する可能性があります。こうなってしまうと苦しいのはタクシー業界で、改正に対する反対デモが行われました。
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MaaSとは?
MaaSとはMobility as a Serviceを略したもので、個人が車を所有するのではなく、移動手段をサービスとして使っていくことを意味しています。次世代の移動の概念としてMaaSはホットワードとなっています。
なぜMaaSが今キーワードとして上がるかというと、私個人としてはシェアリングの流れと自動運転車の実用化の2点がポイントだと考えています。
これまでは自動車を所有することは移動手段の必要性から当たり前のことでしたが、自動車を所有するということは実用的な意味で無駄が多いです。例えば通勤に使ったとしても、それ以外の時間は駐車場に止まっているだけになってしまい、非効率です。シェアリングを行なうと、使うときにだけ使う分だけお金を支払い、サービスを受けることができます。また、自動運転の実用化の可能性が高まっているので、タクシーを自動運転によって代替することも考えられます。
以上のように、車を所有しなくても、サービスとして自宅から移動できる手段が手に入る土壌ができてきているのです。これは大局的にみると、交通のラストワンマイルの問題を解決することを意味しています。公共交通機関として電車は使われますが、駅から自宅までの移動手段として車を使わないといけない方も多いでしょう。この部分をサービスとして利用できるとすれば、自宅から目的地まですべての移動をサービスとして享受することができます。
将来的には、自宅から目的地までの移動を一つのインターフェイスで確保・決済ができるようになることが期待されます。これがMaaSの目的地点になります。
海外のMaaS事情
MaaSとして非常に先進的なのはフィンランドのWhim(ウィム)です。行き先を入力すると最適な経路とその料金が表示され、あとは決済を行い移動するだけ。そんなMaaSの形態が既に実現されているのです。以下はその料金です。便利さ・料金両面から日本にあれば是非使いたいと感じてしまいます。
月額料金はサービス提供地域により異なり、例えばヘルシンキでは「Whim urban」が月額49ユーロ(約6300円)、「Whim Unlimited」が月額499ユーロ(約6万4000円)、バーミンガムでは「Whim urban」が月額99ポンド(約1万4000円)、「Whim Unlimited」が月額349ポンド(約5万円)となっている。
ビジネス的にみると、MaaSのプラットフォーム(インターフェースや決済)をどこが握るかというのは非常に大きなところです。もちろん、Whimはそのポジションを見据えているはずですが、Googleも既に保有する盤石な基盤に加え、モビリティにも手も出しており、プラットフォーム争いは既に進んでいるように感じます。
日本のMaaS事情
日本でもトヨタはWhimに出資していますし、他にもMaaSを目指し、色々仕掛けています。2018年1月にはe-Palette構想を発表しました。これはB向けの電気自動車(EV)で、事業者が自動車の空間を自由に使える仕掛けになっています。これは、MaaSの進行と共にC向けでは需要が頭打ちになり、B向けのサービスに方向を転換しなければならないというトヨタの意図がみえます。個人の自動車の所有は減少し、サービスとして提供するB向け事業者に車を売るということです。
さらに、2018年10月、トヨタはソフトバンクを組んで、MaaSを推進するためにMONET Technologiesを共同で設立しました。ハードが得意なトヨタとソフトが得意なソフトバンクが手を組み、国内では最強です。
【最新版】MONET Technologies(モネテクノロジーズ)とは? トヨタとソフトバンク出資、自動運転やMaaS事業 | 自動運転ラボ
2018年11月にはMaaSの実証実験も福岡で行っており、トヨタがMaaSを念頭において、事業を進めていることがよく分かります。
my route[マイルート] 移動をもっと自由に、もっと楽しく
他にも、シェアリングを進めるパーク24とカーシェアリング事業で業務提携をしたりと、日本ではトヨタが最も動きが活発に思います。
トヨタ以外にも、交通案内のジョルダンもMaas事業を強化しようとしていたり、鉄道各社もMaaSに向けて動いています。あと、ソフトバンクはUberに出資、楽天はLyftに出資といったようなところも注目したいです。
ジョルダンの「乗換案内」、選択肢にカーシェアも追加へ MaaS事業を強化 | 自動運転ラボ
個人的には、トヨタとソフトバンクのタッグに鉄道各社を加えて、鉄道と自動車のMaaSを決済も含めて覇権を握るのがいいのではないかなと思うのですが、そもそも鉄道会社もたくさんありますし、なかなか険しい道程ではあります。ただ、あまり時間をかけると、海外で成熟したMaaS事業者にプラットフォームを取られかねないという懸念があります。
自動運転
自動運転の現状を皆さんはご存知でしょうか?今最も進んで知るのは私の知る限りはGoogle傘下のWaymoではないかと思っています。
2018年12月にはウェイモワンというサービスで地域限定ではありますが、自動運転による配車サービスを始めています。運用上は人が乗って監視はしている状態ですが、無人で運用する実力は既にあります。
自動運転はレベル0~レベル5の段階で語られるのですが、レベル3(レベル3: 特定の場所ですべての操作を自動化。緊急時はドライバーが操作)の段階に達しているといえます。日本ではレベル2(レベル2: ステアリングと加減速の両方をサポート。 )までしか公道で走ることは認められておらず、現状では2020年に高速道路における自動運転の実現を目指している状態です。このような法的な規制もあって、日本は既に自動運転で大きく遅れていますし、これからもっと差を付けられると考えられます。日本で自動運転が解禁された段階で、海外で既に安定運用されている海外の自動運転事業者が入ってくる可能性は高いので、日本の事業者としてなかなか厳しい状況です。
そして日本のライドシェア事情をみると...
ライドシェアの解禁に対し反対するというタクシードラバーの気持ちは分かるのですが、法的な緩和は日本としては必要、というかむしろ後手に回ってしまっている状態です。少なくとも現状のタクシー事業のあり方のままでは将来的に厳しいのは明らかなので、タクシー事業の優位性や今後のあり方を整理して生き残っていくための建設的な議論を業界内部で行ってから、政府と交渉に持っていくなどうまい立ち回りをしないといけないだろうと考えます。